ひょんなご縁で、木曽路の入口に当る木曽の御嶽山の見えるど田舎の農家で一年くらす体験に恵まれました。
私は関西生まれの関西育ち、都会育ちの井の中の蛙でした。田舎の暮らしは五十歳過ぎて初めての処女体験でした。
お年寄りたちの声に耳を澄ますと「ヤットカメだナモ」と言った挨拶言葉が飛び交います。「どんな亀?」と聞いたら「亀じゃないッ」と叱られちゃいました。「お久し振りですネ」の意味だそうです。お嬢サン達でも「オージョコイタ」なんて、コイタ、コクは関西ではトイレでアレする時以外は使いません。こちらではコキまくって貼ります。「クサ!!」
秋、畑で大根引き抜きました。私の脚同様の脚線美(思っているだけ)これを物干し竿にぶら下げて干します。「くの字」とか「への字」にくにゃくにゃに曲がった頃、米糠と塩で漬け込みます。勿論はじめての体験です。半月ほど経て半漬けの大根の漬物の甘いこと。大根は辛いものとばかり思っていましたが、何と甘いのです。料理屋であるような黄色の色など付いていません。正真正銘の無添加色の白色なのです。これこそ真の大根づけ。「大根役者」なんて当たらない役者を呼びますが、大根のうまさを知ってから、大根に失礼では?ナンチャッテ。
畑で白菜採ります。葉っぱは穴が空いて網の目のようになっています。こんな不格好な白菜スーパーでは売って貼りません。白菜はうまいから虫が付くそうです。いい女に虫がつくと同じのようです。虫がついていないということは農薬による消毒がなされている証拠です。スーパーの白菜は農薬の漬物に等しいことを知りました。虫喰の白菜ほど安全なものはないことを知りました。農薬を使わない土、酸素ばかりの様な田舎の空気、ここで採れる産物の無添加の味。五体のしんまで思い知らされた一年でした。