「めっちゃいい匂いするー」
仕事から帰宅した、息子の第一声。
豚肉を燻製していた香りが、玄関にまだ残っていたみたい。我が家では、ベーコンもハムも手作りだ。
材料は豚肉、粗塩、砂糖、粒黒こしょう、ローリエ。香味野菜(セロリなど)がある時は、それをプラスする。
ベーコンにはバラ肉、ハムにはロース肉を使う。
スモークする時には、サクラのチップなど無くても大丈夫。お茶や紅茶の葉で良い。私はコーヒーが好きなので、ひいたコーヒー豆と、その倍量くらいので砂糖でいぶす。
塩漬けするのに三日〜一週間かかるが、出来上がりの美味しさは格別だ。
無添加に拘り始めたのは、二十代前半の頃。
健康食品の販売に携わることになったのを機に、食品や栄養に関する本を読み漁った。
売る側にいるからには、勉強しなければならない。
インスタント食品が安価で出回ることで、食生活が便利になった。が、その反面で、知らず知らずのうちに、添加物を体に入れている事実。それは蓄積され、徐々にからだをむしばんでいくことを知った。
ある日、渡米している友人が一時帰国して、一緒に買い物に行った時のこと。
ピーナッツバターを手にした彼女が、ビンの裏を見て「こんなんアメリカでは禁止になってるやつやで。発ガン性があるって」
日本は諸外国に比べて、食品添加物への規制が緩いようだ。
それからは、スーパーで買い物する際には、必ず裏側の商品表示を見る様になった。
特に加工食肉に使われている添加物の多いこと! 愕然とした。
手作りできる物は、自分で作ろう。調べてみると、作り方は意外と簡単だ。
子供たちが産まれてからは、ますます注意深くなった。
同じ生クリームやヨーグルトでも、原材料が「生乳」だけのものt、乳化剤等の表示が書かれたものがある。当然「生乳」だけのを購入する。それらは、どこのスーパーにも置いてある訳ではないので、わざわざ買いに行かねばならないのだが……。
輸入食料品店で、原材料が「ピーナッツ」だけのピーナッツバターを見つけた。色々探せば、無添加な食品を揃えることは出来る。
お菓子を作るときも、できるだけベーキングパウダーを使わない。
出汁は料理によって、かつお節、昆布、煮干しと使い分ける。この時も煮干しの原材料が「かたくちいわし」だけのを選ぶ。
洋風の料理には鶏ガラでスープをとる。
新鮮な野菜を使って丁寧に調理すれば、その素材のうま味だけで美味しくできることも知った。
拘りの食育で、子供たちの味覚は健全に育ったようだ。
ただ一つ困るのは、味に敏感な娘とは気軽に外食できないこと。
どんなに美味しいと評判の店でも、「変な味がする」彼女の舌は添加物を見極めてしまう。
娘のお眼鏡にかなう店を見つけるのは、無添加食品を探すよりも難しい。