母と私の無添加生活(鹿児島県・あーちゃん)

七月中旬。梅雨が明け、本格的な夏の日照り。中学校の体育館は非常に暑くなる。エアコンはもちろんなく、学生で埋め尽くされた体育館は、いるだけで汗が止まらない。今は、薬物乱用防止教室の真っ最中。小学生の頃から繰り返し聞いてきた同じような内容に、「早く終わらないかな。」と心の中で、ため息を漏らす。

「最後皆さんにお伝えしたいことがあります。麻薬や大麻といった薬物は皆さんにとっては、遠い存在に感じるかもしれません。ですが、皆さんの周りには、薬物と言っても過言ではない物質で溢れています。」

檀上にたって話す講師の先生は、今日一番の熱量で話し始める。私は、圧倒され、思わず、背筋を伸ばす。

「今日は、一つだけお伝えします。人工甘味料のアスパルテーム。砂糖の数百倍の甘味を感じ、コスト削減をもたらしてくれるので、近年、非常によく使われています。ですが、発がん性など様々なリスクも持ち合わせています。その他にも、使用を考えるべき食品添加物は数多くあります。気になった人は自分で調べてみてください。」

その言葉で講演は幕を閉じた。身近に潜む薬物?暑さの汗に、冷や汗が混じる。私の家の食品は大丈夫だよね?と不安を抱きながら、私は、家に帰る。家に帰ると早速、ネットで危険な食品添加物を調べた。そして、恐る恐る家にある食べ物の裏を見てみた。すると、アスパルテームを含め、検索して出てきたスクラロースなど危険性が高い添加物が入っていた。特に私が衝撃を受けたのが、私の大好物の梅干し。梅干しの裏にも、しっかりとアスパルテームの文字があった。炎天下で、部活をしていた私は、熱中症対策として推奨されていた、梅干しをよく食べていた。体にいいと思っていた食品に、体に有毒な添加物が入っていたのだ。

私は、あまりのショックに、膝から崩れ落ちてしまった。この衝撃の事実を、仕事から帰宅した母にすぐさま伝えた。すると、母は、「いい本があるよ。」と言い、本棚をごそごそして、食品添加物の本を二冊渡した。「あなたがお腹にいる頃、添加物の勉強した時の本。お母さんも、最近は仕事が忙しくて、添加物に疎くなっていた。大事な情報を教えてくれてありがとう」と母は言った。

私は、いつも欠かさず見るテレビそっちのけで、食品添加物の本にくぎ付けだった。食品添加物で病気になったり、奇形児や障害を持った子供が生まれる確率が上がったり、農薬使用で虫が一切こなくなったりなどと目から鱗の情報が盛りだくさんだった。若いうちから添加物をたくさんとる生活をしたら…病気になる?将来、自分の子供も病気になりやすくなる?様々な不安が私の脳裏によぎる。そして、私は一つの決断を下す。

「お母さん、今日から無添加生活始めよう」

もともと添加物をとらないように心がけていた母の理解はすぐ得られ、私と母の無添加生活が始まった。

母と一緒にネットで無添加の商品を探す。しかし、いざ、買おうとすると、普通に売られている商品の二倍、三倍の値段。育ち盛りの三人の子供がいる私たちの家族には、高すぎる。もし今まで通りの量を買うと、家計が火の車だ。

「だったら、自分たちで作ってみる?」

母のその提案で、手作り無添加生活にシフトチェンジ。まずは、市の施設が貸し出ししている畑を借りて、無農薬の野菜作りを始めた。無農薬で作るトマトに、なすに、おくらに、スイカ。虫食いや台風、時には、イノシシの被害を受けることもあった。そんな困難を乗り越えて、収穫し、食卓に並ぶ野菜たちは、どれも絶品。初めて食べた時の味と感動は今でも鮮明に覚えている。そして、大好きなはちみつ梅は、スーパーに売っている物はもれなく全て人工甘味料入り。だったら、と、これも手作り。

他にも、手作り体験の募集があったら、なんでも挑戦した。米作りや、陶器づくり。味噌や石鹸も作った。時間や手間をかけたのに、うまくいかないことも多々あった。けれど、その経験を通して、食の有難さ、生産者に対する感謝の念などを再確認した。健康面にもたくさんよい効果が生まれた。季節の変わり目に必ずと言っていいほど、熱発していた私と父。しかし、無添加生活を初めてから、熱発しなくなった。また、ニキビに悩んでいた肌も、ツヤツヤになった。

無添加生活を通して、私は夢ができた。それは、健康体の為に、いかに予防医学が大切で、食など体内に入ってくるものの取捨選択の必要性を普及させることだ。しかし、無添加生活を徹底するとなると、お金や時間がかかる。だからこそ、その人の体質にあった無添加生活を提案できるようになりたい。無添加生活を通して、体と心が健康になり、日常が豊かになる人が増える社会が来ることを願いながら、私は今日も夢に向かって歩む。

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