化粧品臭くない、化粧品(岩手県・おはりこコアラさん)

その自然化粧品と出会ったのは23年前。きっかけは当時三歳だった次男がつくった。実家に子どもたちを連れて遊びに行っていた。母がたまたま出かけていなかった所へ、セールスのおばさんらしき人が訪れる。
実家は狭い。はしゃいだ次男は、こたつの周りをぐるぐると走り回っていた。
派手なおばさんのお喋りに聞き入ってしまっていると……。すぐ側で次男が転ぶ。こたつがけに足を引っかけたのだろう。
わんわん泣いた。すぐに抱っこする。どこかぶつけたのかと心配した。すると……口の中から血が出ている。
その時だ。セールスさんが言った。
「大丈夫! どれどれ口開けて見せて——」
カバンの中から何やら取り出し、ふたを開け中身をしぼり出すと、次男の口の中に塗るではないか。あっけにとられ、何も言う暇もない。(えぇ? 大丈夫なのぉ?)
その不安をよそに、次男はすぐに泣き止んだ。あれ? セールスさんの言葉通りだぞ。
「あぁ、痛いの飛んでったねぇ、良かった良かった。もう大丈夫だよぅ」
セールスさんは笑顔だ。キツネにつままれたかのようで、私は呆然としていた。
その後、彼女は商品の説明をし始めた——。母も愛用しているアロエベラ液、83パーセントの化粧品であること。香料保存料入っていないこと。痛み、かゆみ、切り傷、火傷、どんな時でも役に立つから、まるで薬であるかのような使い方をしている人もいる程——。
その場で一本購入してしまった。
それは、私が長年求めていた物であったからだ。
幼い頃、母と街へ下がるのは、何の用事だったのだろう。おたふくにかかって、病院に行く際もバスだったし……。母が車の免許を取るまでは、何度も乗ったあのバス——。
私の苦手なバス。いつだって酔って吐いた。必ず気持ち悪くなるその原因は、匂いだ。
バス特有の匂いだけならまだしも、大人の女性が乗った時は災難だ。あの化粧品の匂いは強烈だった。なんであんな臭い物を、顔にごてごてと塗りたくるのだろう。大ッ嫌い。バスの中、いつもゆううつになった。そして途中だったり降りる頃だったり、がまんできなくて吐いていた。ぐったりだった。

セールスのおばさんは嫁ぎ先にも顔を出すようになった。アロエベラ液ほぼ100パーセントだと言う、まずくて高いジュースもすすめられて飲むようになった。水で薄めて慣れる事から始めた。母も飲んでいるか、という安心感もあった。
不思議なことが起こった。当時頭痛に悩まされていたのが……三ヶ月後、
(あれ? この頃頭痛くない)と気付く。
旦那の車の助手席に乗り、いつも酔って具合悪くなっていたが、それも無くなった。
セールスのおばさんにすすめられて、商品の勉強会や、心構えの学びの場へもいく。
乗せられて行って、自分の世界が広がるのを感じた私は、35歳で車の免許取得に挑戦する——。
あれ以来、頭痛はほとんどない。無添加の高級野菜ジュースが、私を支えてくれているからだ。食べ物が躰を作ってくれていることを、お陰で学ぶことができた。
高級すぎて、今まで何度諦めようと思ったか知れない。長女も躰が弱かったので、アロエベラを飲ませた。今では一歳八ヶ月の男の子を育児中である。
これ程長く愛用するとは、正直思っていなかった。リーダーであったセールスのおばさんも、かなり前に亡くなってしまった。
いまだにアロエベラの化粧品しか塗らない。人におすすめするのは苦手だが、何人かには分けている。死ぬまで愛用したいなと思う。化粧品もジュースも——。

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