無添加生活と私(東京都・後藤さん)

 私は子供の頃からアレルギー体質で、アトピーも持っていたが、今では症状がほとんどなく、いたって健康に生活できている。これは「無添加」にこだわった食生活のおかげだと思っている。

 一口にアレルギーと言っても症状や原因は様々だが、私は比較的軽い方だった。病院で検査をしてもらったこともあるが、はっきりとした原因は分からず、成長とともに改善していったため、あまり気にしていなかった。

 ところが、大学生になって上京してきた途端、アレルギーとアトピーの症状が出始め、次第に悪化していったのだ。最初は、慣れない東京での生活にストレスや疲れが溜まり、一時的に症状が出ているだけだと思っていた。だが半年ほど経ってもなかなか良くならず、湿疹や目の充血といった症状に加え、疲れやすさや集中力の低下も感じるようになった。困り果てて母に相談してみると、「普段どんなものを食べているの?食生活を見直してみなさい。」と言われ、その時初めて、母が普段の食事にどれほど

気を配っていたかを知ったのだ。実家で暮らしていた時は当たり前に感じていたが、我が家では定期的に、大きな段ボールに入った野菜や果物が届いていた。有機農法で栽培されたものを、契約農家から配達してもらっていたのだ。お米や豆腐なども、地元の産地や製造にこだわった、決められたお店で母が買っていた。また、ドレッシングやマヨネーズなど、よく使う調味料は母が手作りし、市販のものを買うことはほとんどなかった。私のアレルギーが軽いもので済んだのは、こうした母の努力のおかげだったのかもしれない。

 それに比べると、当時の私の食生活はひどいものだった。ファスフードやコンビニ弁当、インスタント食品など、好きなものを自由に食べられる喜びに舞い上がり、健康を考えた食事をしようなどとは少しも思っていなかった。そこで私は、それまで毎日のように口にしていた菓子パンやスナック菓子をなるべく控えるようにした。すると早くも1週間ほどで、あれほど悩まされていた湿疹や吹き出物が治まってきたのだ。市販薬でも決して良くならなかった症状が明らかに軽減したことに驚いた私は、やっと食の大切さに気づき、自分でも添加物について調べるようになった。そして、自分がいかに無知で、危険な食生活を送っていたかを知ったのだ。添加物には実に多くの種類があり、世に出回っている食品、化粧品、さらにはペットフードに至るまで、ほとんどの製品に使われている。中でも特に危険とされる添加物には、癌や認知症、精神不安などを引き起こすものもあり、他の添加物と一緒に摂取することで、毒性がより高まることもあるという。やはり自分の健康は自分で守るしかないのだと思い立ち、それから私は食品を買うとき、必ず「原材料名」をチェックし、危険な添加物が入っていないか確かめてから買うようにしている。食品に限らず、化粧品やシャンプーなど毎日使うものも、極力無添加のものを選ぶようにしている。

 また、ワインが好きな私は数年前、友人に誘われ、栃木県のあるワイナリーに見学に行ったことがある。ワインにも、保存料や酸化防止剤などの添加物が入っていることが多く、近年増え始めたオーガニックやビオディナミ製法のワインに興味を持っていたのだ。そのワイナリーでは、近くの特別支援学校の生徒達がブドウの栽培に携わり、除草剤や化学肥料を一切使わない完全無農薬の栽培を行っていた。醸造所での発酵も、天然酵母を使うという徹底ぶりだ。有機農法は手間がかかるが、青空の下、生徒達が生き生きと作業をしていた姿が印象的だった。一口飲むと、豊かな自然を反映した地味深い味わいが広がり、丁寧に愛情込めて造られたことがよく伝わるワインだった。やはり本来人は、自然に作られたもの、本当に美味しいものを求めているのだと実感した。

 現在二児の母となった私は、かつて私の母がしてくれたように、子供の食にも気をつかうようにしている。清涼飲料水やスナック菓子などは控え、お弁当も冷凍食品には頼らず、手作りのものを食べさせるようにしている。ある食品メーカーでは、子供の味覚が発達する前に自社製品の味を覚えさせ、その後も長く買ってもらえるように、商品開発しているという。最初に美味しいと感じるのが、化学調味料の味というのは悲しい。

 私がここまで無添加にこだわるようになったのは、自分が無添加の食事によって体質改善できた経験と、幼い頃からの母の努力のおかげだと感謝している。今度は私が、自分の子供や周りの人々に、無添加の良さや健康の大切さを伝えていけたらと思う。

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